リーディングの指導 2006年5月26日

1. リーダー教材と絵本とその特徴

a. Authentic picture books

英語圏の子どもが家庭や学校で読んでもらう絵本、あるいは自分で読む絵本。
文型の選択や単語の難易度などはあまり考慮されていないが、子ども向けのものなのでEFLで使えるものも多い。絵本1册を何回ものレッスンで指導する場合には多少の工夫が必要。特に同じ本を何度も読んでもらいたがる年齢を過ぎた高学年には、指導のテクニックを使うと興味を持たせ続けることができる。

b. ESL/EFL picture books

英語を第二言語/外国語として学ぶ学習者用に作られた教材としての絵本。
絵本のよさに加えて、教材としての機能も持たせてあるので使いやすい。指導者用の手引書にはコピーして使えるカードやCDがついていたり、指導方法が丁寧に書かれているものが多く、絵本指導の経験が少ない指導者にも使いやすく、手始めによい。

c. Graded readers for native speakers

英語圏の子どもが母語を学ぶ過程で使う教材。
レベルの低いものからかなり上のものまであるので教材探しの手間がいらない。単語が多少読める生徒に自立してどんどん読ませ、自信をつけるのによい。ただし日本での英語指導は週1回であることが多いので、生徒の英語のレベルが追い付かず、ある時点で急に難しくなることもある。指導者用の手引きには、生徒の進歩を記録するチャートやコピー可能なワークシートなどもある。CDもあるのでうまく利用するとよい。

d. Graded Readers for ESL/EFL

英語を第二言語/外国語として学ぶ学習者用に作られた教材。
かなり意図的に語彙や文型を選んで作られているので、指導目的や生徒に合わせて使うとすごくよい。レベルの低いものの中にはストーリーの展開が単純な本もあるが、レベルの高いものでもフィクション、ノンフィクションともに最近かなり充実してきて予算や好みに合わせて選べるようになった。

2. EFLのクラスでリーダー教材や絵本を使う理由

  • 子どもは絵本、お話が大好き。
  • 楽しい。
  • 絵本を使って楽しんで遊び学んだことは文字だけよりも心に深く残る。
  • お話を通して歌、会話、ドラマなどいろいろなアクティビティーに発展できる。
  • もっと知りたいと言う気持ち、お話を聞いていてわかるという気持ちを子どもに持たせられる。
  • 知らない単語があったり、全部の文章がわからなくてもよいということを教えられる。
  • 繰り返しの練習から離れ、さまざまな単語、表現に触れることができる。
  • コースブック以外のテーマにそった単語や表現に慣れ親しむことができる。
  • 絵本に描いて(書いて)あるイラストと言葉を純粋に楽しめる。
  • 英語圏や未知の世界を絵と文によって追体験できる。
  • 絵や色使いで現実の世界とは違った雰囲気を味わえる。
  • 自分で読めるようになれば、友だちにもコーチして、自信を持つ。
  • 一人で読めるようになれば、(進度に関わらず)どんどん個人で本を読んでいける。
  • 物語を英語で読めると感動できる。
  • 繰り返しの表現によって読めるようになる。
  • 習った単語が実際の場での使用が可能。インプットしたものがアウトプットするきっかけとなる。
  • motivationを上げられる。
  • 自然な言葉がインプットできる。
  • 絵があるので説明が不要。
  • 子どもが想像を繰り広げることができる。
  • 子どもが主人公の気分になれる。
  • あまり準備が充分でないとき、用意したことがうまくいかない時などに本を使うと、へたなレッスンプランよりも効果があがる。
  • テーマの導入、展開、仕上げなど、レッスンのあらゆる段階で本を使える。

3. リーダー教材と絵本の使用例と子ども達の反応  年齢とレベルに応じた使い方を考える

a. 文字はあまり読めない

読み聞かせる。
ストーリーの内容が年齢や興味に合っているものを選ぶ。言語レベルの高いものも可。

b. 文字が多少読める

先生が読み聞かせた後、生徒自身が音読する。
内容が理解できたかをチェックしたり、文型、単語の練習などができるワークシートをする。

c. 一人で読める 

生徒が自分で選んだ本を音読する。
先生に読んで聞かせ、先生は一つずつの単語を正確に読むように指導する。
何冊読んだかの記録をつけてやる気を引き出す。
  表に日にち、タイトルや番号、簡単な感想などを記録する。
  10册ごとにシールをはる。
  レベルの低いものから読み始めだんだんレベルの高いものを読む。

4. リーダー教材と絵本を使ったアクティビティー

a. 読む前

テーマについての子どもの体験を聞き出す。
表紙の絵について質問したり、知っている単語を英語で言ったりする。

b. 読んでいる最中

○ 初めて読む時

そのまま普通に読む。(絵を見れば内容が理解できるとき、内容に引き込まれているとき。)
補足と省略(理解しにくいような箇所があるとき、気乗りしない子がいるときなど。)
日本語で補足説明をしながら読む。
簡単な単語に置き換えて読む。
すべての文を読まずに省略して読む。

Interactive Reading
子ども自身のことを聞き出しながら読み進める。
次のページの予測を子どもに聞きながら読む。
最後の1ページを読む前に、結末がどうなるかを質問する。

○ 2回目以降に読む時 

加工して読む。
いくつかの単語を変えて読み、オリジナルと違う部分で生徒がなにかの動作する。
生徒を巻き込みながら読む。(繰り返して同じ文章が出てくる本によい。)
生徒に登場人物の役割を与えて、その部分を一緒に読む
同じ文章がくり返して出てくる場合は、皆でコーラスで言う
生徒に役割を与え、その役割の絵を持たせる。単語がでてきた時に動作をする。

c. 読んだ後

本の感想を聞く。
ストーリーの内容を生徒が日本語で要約する。
自分が主人公やその他の登場人物の立場ならどうするかなど、子ども自身の考えを聞く。
ごく簡単なBook Reportに感想などを書く。
物語がその後どうなるかを想像して絵を描き、それについて述べる。単語を書き入れる。
内容が理解できたかをチェックするために質問する。
出てきた物や人物、できごとを列挙する。出てきた順番を考える。本を見て確認する。
絵カードで遊ぶ。
工作をする。
ストーリーに関連した絵を描く。

5. 絵本の読み聞かせの実践

A Party for Brown Mouse (PM Plus Level 8, Thomson Learning) ISBN 0 17 009634 3 (set)
ねずみが誕生パーティーをし、招かれたねずみたちがネコに追われながらパーティー会場に来て、ネコの形のケーキを食べる話。PM Plusは絵のタッチが非常に綿密なものがあり、美しいものが多い。中学生がレベルの低い本でも絵にひかれて読むことが多い。1レベルに10册あり、レベルごとにセットで販売する。

Candy for Breakfast (Oxford Dolphin Readers Level 2) ISBN 0-19-440096-4
朝食になにを食べるかがなかなか決まらない話。女の子と母親のやりとりの会話で成り立つ。このシリーズは左ページにはストーリーが、右ページにはクロスワードクイズやワークブックのページがあり大変ユニークな編集。絵本を読み聞かせるだけでなく、発展させたいけれど準備に時間をかけられない先生には便利。価格が低い割に内容が充実している。レベル3、4は中学生のサイドリーダーにも使える。別売でワークブック、CDもある。CDは本には書いていない文章も読まれていていろいろ発展させるのにも便利。

Sam's Picnic (PM Plus Level 5, Thomson Learning) ISBN 0 17 009592 4 (set)
母親と女の子、ペットの犬がピクニックに行くが雨が降ってきてしまう。車に乗って帰り、家で敷物を敷いてテレビを見ながらピクニックの続きをする話。

6. レッスンプラン例

Candy for Breakfast (Oxford Dolphin Readers Level 2) ISBN 0-19-440096-4
小学3年生クラスで、朝食をテーマにした単元を学んだ後に仕上げとして使用。その後この本の絵の部分とストーリーの部分を切り離し、絵をストーリーの順番に並べるアクティビティーを行なった。その他、巻末にあるpicture dictionaryの絵を切ってカードゲームをして遊んだ。朝食についてのClass Surveyをおこなった。表の縦軸に友だちの名前を書き込み、横軸に食べ物を絵で描き入れて表を完成させ、友だちに質問して中に答えを記入した。

Dinner is Ready! (Shared Reading Mice Series, 4 Mice, Pearson Longman ELT.) ISBN 9620121422
幼児(年中)とその姉(小2)、母親の3人の絵本クラブ(月1回60分)で導入に使用。本で食べ物を紹介した後に、Are You Hungry?という歌を聞いた後、食べ物の絵カードでゲームをしたり、"…, please."という表現を親子でしたりして1レッスン使った。子どもがワークシートで作業している間に母親にはこの本の音読の指導をし、家で母親が子どもに自信を持って読み聞かせできるようにした。このタイトルは、Would you like …? Yes, please. というやりとりがくり返され、いろいろな食べ物がでてきて仕掛けも楽しい。どのタイトルも仕掛けがあり、子どもが楽しめる。

In the Morning (Potato Pals 1 Book A, Oxford University Press.) ISBN 0 19 459148 4
動詞の導入に使用。この教材は低年齢向けの印象があり、ストーリーも単純なので使用していなかったが、高学年クラスに動詞を教える時によい絵カードがみつからず、この本で導入した。導入の後すぐに生徒が音読するのにも本を使用した。生徒の中には朝髪をとかさない男の子がいて、そういうページはI don't comb my hair.と読むようにした。朝食のページではそれぞれの生徒が食べる物を入れて読むなどして、コースブックから離れて自分のことについて表現できた。読み聞かせには単純な本でも、生徒自身のことを表現する見本としてこのシリーズが使える。

Springboard (Macmillan Language House)
今年度スタートした3~6年生の年齢混合のクラスで、レベル3を使用し始めた。読み聞かせの後、ワークシートなどを単語練習に使用中。レベル3を今後1年かけて使う予定で、まだ報告できるような結果は出ていない。このシリーズは1レベルに8册あり、セット販売の教材の中では1册あたりの価格が安い。音声とワークシートが無料でダウンロードできる。別売のBenchmark Kitもあるので生徒のレベルを把握しやすい。

7. 参考図書

Andrew Wright (1995) Storytelling with Children. Oxford University Press ISBN 0-19-437202-2

Wendy A. Scott and Lisbeth H. Ytreberg (1990) Teaching English to Children. Longman ISBN 0-582-74606-X

David Vale with Anne Feunteun (1995) Teaching Children English. Cambridge University Press ISBN 0 521 42235 3

ルドルフ・シュタイナー 坂野雄二 落合幸子共訳「教育術」みすず書房 ISBN 4-622-00613-8

8. ワークショップのまとめ

  • 親が読み聞かせて読むことの楽しさを一緒に味わうことで読書好きな子どもに育つように、リーディングの指導もまず先生がクラスで読み聞かせて本を一緒に楽しむことから始めるのがよいと思う。
  • 絵本やリーダー教材はあれこれ発展させたり単語練習などしたりしなくても、読み聞かせるだけ、あるいは生徒自身が声に出して読むだけで充分な効果がある。
  • 1册の本を1度だけしか使わないのはもったいない、どう指導してよいかわからないので使っていない、という気持ちも理解できるが、まずは読み聞かせをクラスで実践してみて、子ども達の反応を見ながら1册を繰り返して使うためのいろいろな指導テクニックを自分で開発してはどうだろうか。
  • ESL/EFL向けの子どもの教材としての絵本や、リーダーを使うと初心者でも比較的楽に指導できる。